12月 19 2011

外来種がもたらした天国と地獄
〜漁業大国ノルウェー〜

Seafood Party続いてのノルウェー産は、私の大好物でもある「カニの王様」とも呼ばれているタラバガニ (king crab) 。

「ノルウェーでタラバガニが獲れる!?」、と疑問に思った方は恐らくカニ通です。私はカニ通とまでは言いませんが、「ノルウェー産」があることを知って心底驚いた一人です。

ですがこのタラバガニは、もともと始めからノルウェーの海に生息していたわけではないようです。タラバガニは本来、北太平洋にしか生息しない甲殻種です。つまりノルウェーに生息するタラバガニは、人為的に移入された外来種ということになります。

放流したのはロシアの生物学者だそうです。「たらふくタラバガニが食べたい!」と夢見たのかどうかは知りませんが、50年程前(旧ソ時代)にカムチャッカから赤ちゃんタラバガニを運んできて、バレンツ海 (北極海の一部でスカンジナビア半島の上)に放流したそうです。繁殖を成功させるまでに随分と時間はかかったようですが、その後は順調に増殖を繰り返し、それと平行しながら生息域を広げ、20年程前からノルウェー海(ノルウェーの西)でも発見されるようになったそうです。現在、ノルウェー海では大増殖中で、今尚えっちらほっちらと西へ南へと移動しているそうです。

このノルウェー産タラバガニの美味しいこと、美味しいこと! 肉の量、風味、歯ごたえ、どれをとっても絶品という言葉が相応しい。そんなノルウェー産タラバガニが、「活きたまま」日本に空輸されていることをご存知でしょうか? 日本のレストラン業界で「最高級品」として人気急上昇中のようで、対日輸出は絶好調! 現在、1kg当り500kr(約6700円)で取引されているようですが、この取引高を上回る輸出海産物は他にはありません。つまりタラバガニは、ノルウェー王国にとって非常に儲かる、水産資源のスター的存在なのです。

しかしかながこのタラバガニは、一方で「侵略者」としても話題に事欠かない存在です。巨大なタラバガニは、獰猛種が生息しないノルウェー海では「無敵のギャング」。海底の植物を食いつくし、魚や貝までも食べてしまう。お魚を捕る為に仕掛けられた網にひっかかることも珍しくなく、当然漁師さんは大激怒。この「無敵のギャング」は海洋生態系に負の影響を及ぼしているとして、自然保護団体(WWF)が撲滅を強く主張するまでになっています。

確かに、もともとはノルウェーに生息していたわけではなく、しかもよその国が連れてきたわけですから、お魚や貝を獲るノルウェーの漁師さんにとっては大迷惑な侵略的外来種です。ですが、大きな利益が得られる「スター」を、国がそうやすやすと手放すわけがありません。現にノルウェー水産省は、今シーズンのタラバガニの漁獲を33%増加すると発表しています。大増殖中の「無敵のギャング」を少しでも減らす為ではなく、儲ける為です。ただその過剰利益を、負の影響を生態系に及ぼしている「無敵のギャング」の管理費に使うというような内容を提案しているので、対立しているWWFとの調和に少し繋がる政策ともいえるかもしれません。

それにしても、活タラバガニが日本に空輸されているなんて、正直驚きました。だって、タラバガニなら日本海やオホーツク海でだって獲れるでしょ!?  人間の食に対する欲望はなんて巨大なんでしょう。そいういう私も、我が家で行う「秋の味覚を楽しむ会」では、欲望丸出しで「タラバガニ争奪戦」に挑みます。しかも未だかつて負けたことがない。タラバガニを狙う私の目がギラギラしすぎているから怖くて誰も手が出せない、とも言えますが。私の食に対する欲望も相当巨大です。

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カテゴリー: ノルウェー生活 | 4件のコメント